「いくら稼いだら確定申告が必要なのか」——フリーランスを始めたばかりの方や、副業収入が出てきた方から特によく聞かれる疑問です。申告が必要な金額は一律ではなく、働き方や収入の種類によって大きく異なるため、「自分はどのケースに当てはまるのか」を正しく把握しておくことが重要です。
この記事では、個人事業主・フリーランス・給与所得者それぞれの申告不要ラインを早見表で整理し、税額の計算方法や、不要なケースでもあえて申告した方が得なパターンまで具体的に解説します。
この記事でわかること
– ケース別に確定申告が不要になる金額の目安
– 所得税額を自分で計算する3ステップと速算表
– 申告不要でも確定申告した方が良いケースと理由
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確定申告が不要な金額はいくら?ケース別に解説

確定申告が必要かどうかは、収入の種類や働き方によって判断基準が異なります。まずは下記の早見表で自分の区分を確認してください。
| 区分 | 確定申告が不要になる目安 |
|---|---|
| 個人事業主・フリーランス | 所得(収入-経費)が48万円以下 |
| 給与所得者(副業あり) | 副業の所得合計が20万円以下 |
| 公的年金受給者(65歳以上) | 年金収入が158万円以下 |
| 公的年金受給者(65歳未満) | 年金収入が108万円以下 |
| 株式等(特定口座・源泉徴収あり) | 原則申告不要 |
以下では、各ケースをさらに詳しく説明します。
本業として働く個人事業主・フリーランスの場合
日本における本業としての個人事業主やフリーランスは、所得税の確定申告が必要かどうかは年間の所得額により異なります。一般的に、年間の総所得金額が48万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です。
ただし、この上限額は所得控除後の金額に適用されるため、実際の収入がもっと高くても控除によって所得が48万円以下になる場合があります。
この規則には例外もあります。例えば、主となる個人事業主・フリーランスとしての収入以外に事業者などから給与を受け取っている場合、その給与と合算して所得税の確定申告が必要か判断されます。また、青色申告を行っている個人事業主は、特別控除額が適用され、所得控除後の所得が65万円以下であれば確定申告は不要となる場合もあります。
ただし、青色申告特別控除を受けるためには、一定の要件を満たし、事前に青色申告承認申請書の提出が必要です。
副業で働く給与所得者の場合
給与所得者が副業で収入を得た場合、確定申告の必要性はその年間所得に依存します。給与所得者の副業収入が20万円以下の場合は所得税の確定申告は不要です。しかし、20万円を超える収入がある場合、確定申告が必要になります。
副業収入が20万円以下であっても、その収入が給与所得と合わせて総所得金額の控除後に48万円を超える場合は、確定申告が必要です。また、給与所得者が副業で得た収入に対して経費を控除する場合や、損失を被った場合には、確定申告を行うことで税金の還付を受けられる可能性があります。
このように、確定申告の必要性は個々の状況や所得額によって異なります。自身の状況を正確に理解し、適切に申告することが大切です。
収入に対する税金の基本的な仕組み

仕事に関連する経費の控除
仕事に関連する経費の控除は、所得税の計算において重要な要素です。ここでいう経費とは、仕事をする上で必要となった費用のことを指します。
例えば、自営業者やフリーランスの場合、事業用の資材購入費、オフィスの賃料、通信費、交通費などが経費として認められます。これらの経費は、所得から差し引くことができるため、支払う税金の額を減らすことができます。
経費の控除を適切に行うことで、実際の収入に対して公平な税金が計算されるようになります。ただし、経費として申告できる項目には限りがあり、私的な支出や法人税法上認められない費用は控除対象外となります。
給与所得者が確定申告を必要とするケース

ここからは、給与所得者が確定申告を必要とするケースと不要なケースについてそれぞれ見てみましょう。さまざまなパターンを押さえておくことで、申告漏れを防ぎ、適切に税金を納めることにつながります。
確定申告が必要な人
給与所得者で確定申告が必要になるのは、主に次の4パターンです。
当年の年収が2,000万円を超える収入者
日本の税制度では、年収が2,000万円を超える給与所得者は、会社での年末調整が受けられないため、自分で確定申告を行う必要があります。この収入層は高額所得者と見なされ、所得税の計算が複雑になるため、自身での確定申告が求められます。
副業で得た収入が20万円を超える人
副業や兼業によって得た年間収入が20万円を超えた場合、収入に対して確定申告を行う必要があります。このパターンでは、本業の給与所得と合算して総所得を計算し、税額を算出します。
公的年金受給者で受給額が一定以上の人
公的年金受給者のうち、65歳以上は年金収入が158万円超、65歳未満は108万円超の場合に確定申告が必要になります。年金受給額に応じて税金が発生するため、該当する方は所得税の申告を行いましょう。
株式・FX・仮想通貨による利益がある場合
株式投資などによって得た収益が一定の金額を超えると、確定申告が必要になります。特定口座(源泉徴収あり)であれば原則申告不要ですが、一般口座を利用している場合や、年間の利益が20万円を超える場合には確定申告が必要です。FXや仮想通貨(暗号資産)による利益も同様に、年間20万円超で申告義務が生じます。
不動産や資産売却による収入がある人
不動産やその他の資産を売却して得た利益についても、確定申告が必要です。これには不動産の売却益や土地、株式などの資本資産売却から生じる所得が含まれます。不動産や資産売却に関する所得は、一般の給与所得とは異なる税率で課税されることが多いため、個別に申告する必要があります。
確定申告が不要な人の例
一方、給与所得者で確定申告が不要な人の例としては、下記のようなものが挙げられます。
副業で得た収入が20万円未満の人
確定申告の要件として、副業や兼業から得た収入が年間20万円未満であれば、その収入について確定申告をする必要はありません。これは、この額が税法上の非課税枠に当たるためです。
個人事業主やフリーランスで事業所得が48万円以下の人
個人事業主やフリーランスであっても、年間の事業所得が基礎控除額である48万円以下であれば、確定申告の義務は生じません。
48万円という金額は「基礎控除」にあたり、所得税の計算で全ての納税者に適用されるため、この額以下の所得であれば税金は発生しません。
年末調整を会社に任せていて副次的な収入がない人
一般的な給与所得者で、年末調整を会社で行っており、副業やその他の収入がない場合は、確定申告を行う必要はありません。
年末調整では、会社が給与からの税金を計算し、必要に応じて過不足の調整を行います。このため、追加の所得がなければ、個人での確定申告は不要です。
確定申告が必要な金額の計算方法
確定申告では、収入から税額を計算するまでに3つのステップを踏みます。「自分はいくら納税することになるのか」を把握しておくと、資金繰りの管理にも役立ちます。
以下では、所得の算出から税率の適用まで順を追って解説します。計算の流れを一度つかんでおくと、節税の余地がどこにあるかも見えやすくなります。
ステップ1:年間収入から経費を引いて「所得」を算出する
最初のステップは、年間の収入合計から仕事に関連する経費を差し引き、所得を求めることです。
所得 = 年間収入 - 経費
フリーランスや個人事業主の場合、通信費・交通費・書籍代・ソフトウェア代など、事業に直接関連する費用を経費として計上できます。経費を適切に計上するほど課税対象となる所得が下がります。
ステップ2:所得控除を引いて「課税所得」を算出する
次に、所得から各種控除を差し引いて課税所得を算出します。
課税所得 = 所得 - 所得控除の合計
所得控除には、誰でも適用される基礎控除(48万円)のほか、社会保険料控除・医療費控除・青色申告特別控除(最大65万円)などが含まれます。課税所得が低いほど納める税額も少なくなるため、使える控除を漏れなく把握することが重要です。
ステップ3:税率を掛けて所得税額を算出する
課税所得が決まったら、以下の速算表に当てはめて税額を計算します。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得税額 = 課税所得 × 税率 - 控除額
【計算例】個人事業主・年収300万円・経費100万円の場合
- 所得:300万円 - 100万円 = 200万円
- 課税所得:200万円 - 48万円(基礎控除)= 152万円
- 所得税額:152万円 × 5% = 76,000円
この例では、青色申告特別控除や社会保険料控除などを活用すれば、課税所得はさらに下がります。実際の申告では、自身の状況に合わせた控除を組み合わせて計算しましょう。
給与所得者が確定申告を必要とするケース
給与所得者でも、条件によっては確定申告が必要になります。副業・兼業が広がる今、会社員にとっても無関係ではありません。

給与以外の所得が年間20万円を超えた場合、給与所得者であっても確定申告が義務となります。
主なケースは以下のとおりです。
- 副業収入が20万円超: フリーランス案件・ライター業・ハンドメイド販売など、勤め先以外からの所得合計が基準を超えた場合
- 2か所以上から給与を受け取っている: メインの職場以外でアルバイトや掛け持ち勤務をしている場合
- 年収2,000万円超: 勤め先で年末調整が完結しないため、自分で申告が必要
- 医療費控除・住宅ローン控除(初年度)の適用: 年末調整では処理できないため、申告によって還付を受ける必要がある
- 株式・FXなどの譲渡益: 特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で利益が出た場合
なお、副業収入が20万円以下でも、住民税の申告は別途必要なケースがあります。「確定申告が不要=何もしなくていい」ではない点に注意してください。給与天引きだけでは処理されない所得が発生したときは、早めに申告要否を確認する習慣をつけておきましょう。
確定申告不要に当てはまる場合でも確定申告した方が良いケース

確定申告が不要なパターンに当てはまる場合であっても、一部のケースでは確定申告を行った方が良いとされることがあります。ここでは、確定申告をした方が良い3つのケースを紹介します。
当年の経営が赤字になったとき
個人事業主やフリーランスの場合、事業で赤字が発生した年は確定申告を行うことが推奨されます。赤字を申告することにより、その損失を翌年以降の所得から控除することが可能になり、将来の税負担を軽減することができるためです。
この控除は、赤字の繰越控除として知られており、一定の期間内(通常10年間)であれば、赤字分を後の年の所得から差し引くことができます。
源泉徴収で税金を払いすぎているとき
源泉徴収で税金が過剰に徴収されている場合、確定申告を行うことで過払い税金の還付を受けることが可能です。給与所得者が副業で所得を得た場合や、前年度に比べて所得が大幅に減少した場合などによく見られるケースです。
確定申告を通じて実際の所得と納税額を精算し、過払い分を還付請求することができます。
住民税の申告をまとめて行いたいとき
確定申告を行うと、所得税のみならず住民税の申告も同時に行うことができます。これにより、住民税に関する別途の手続きを省略でき、税務管理が容易になります。
特に、副業の所得がある場合や、複数の収入源がある場合には、全ての所得に関する確定申告を行うことで、正確な税額の計算とスムーズな税務処理が可能になります。
フリーランスは基本的に確定申告が必須
フリーランスは、当年度に得た収入に関して確定申告を行うことが基本的に必須になります。フリーランスは個人事業主としての扱いを受けるため、自身の事業からの所得に対して自ら所得税の計算と申告を行う必要があります。
これには、事業に関連する収入全体と、事業運営にかかる経費の計算が含まれます。経費を所得から差し引いて純利益を算出し、その利益に対して税金が計算されます。
確定申告を行わなかった場合は罰則が課される
確定申告を義務付けられているにもかかわらず、これを怠った場合、罰則が課されることがあります。これには、未納税金に対する延滞金の徴収や、場合によっては過少申告加算税などの追徴税が含まれます。
さらに、意図的に申告をしない行為は、税法違反と見なされる可能性があり、より重い罰則が課されることもあります。確定申告を行うことは、税法上の義務であり、フリーランスの方々はその義務を適切に果たすことが求められます。
よくある質問(FAQ)
確定申告に関して特に疑問を持たれやすい3つの質問に、簡潔にお答えします。
Q1. 収入がゼロでも確定申告は必要ですか?
基本的には不要です。所得がゼロまたはマイナスであれば、所得税は発生しないため申告義務もありません。ただし、前年に赤字が発生していて繰越控除を使いたい場合や、源泉徴収された税金の還付を受けたい場合は、申告することで有利になる場面があります。開業初年度で収入が少ない個人事業主も、青色申告の適用を継続するために申告を行うケースがあります。
Q2. 副業収入が20万円以下なら絶対に申告不要ですか?
所得税の確定申告は不要ですが、住民税については別途申告が必要になる点に注意が必要です。住民税は「20万円以下は不要」というルールが適用されないため、副業収入が1円でも発生した場合は、お住まいの市区町村に住民税の申告をしなければなりません。会社員で確定申告を行わない場合でも、住民税申告の義務は残ります。
Q3. 個人事業主とフリーランスで申告ルールは違いますか?
税務上の扱いはほぼ同じです。フリーランスは法律上「個人事業主」に分類されるため、申告のルールは共通しています。どちらも事業所得に対して確定申告が必要で、基礎控除48万円や青色申告特別控除などの適用条件も同一です。「フリーランス」という呼称は働き方のスタイルを指す言葉であり、税法上の区別ではありません。
フリーランスが確定申告をスムーズかつお得に行うためのポイント
フリーランスが確定申告をスムーズかつお得に行うためには、次の3つのポイントに注意して準備を進めることが大切です。確定申告は一度に大量の書類を処理する作業になりがちですが、日頃からの習慣と制度の正しい理解があれば、負担を大幅に減らせます。節税効果を最大限に引き出しながら、ミスなく申告を完了するために押さえておきたいポイントを解説します。
期限ぎりぎりにまとめて作業しない
確定申告は煩雑な作業を伴うため、期限直前にすべてを行うことは避けるべきです。通年で収入や支出の記録を整理し、定期的に確認することで、申告期間になっても慌てずに済みます。
また、早めに申告作業を開始することで、必要な資料の不備や誤りを修正する時間も確保できます。なお、年の途中で引っ越した場合は申告先の税務署が変わるため、事前に確認しておきましょう。
関連記事: 個人事業主が引っ越したら確定申告の税務署はどう変わるか
青色申告を行う
青色申告は、より多くの税務上のメリットを享受できる申告方法です。青色申告を行うことで、高額な青色申告特別控除の適用や、赤字の繰り越しが可能になります。これにより、税負担を軽減し、事業の損益管理をより効率的に行うことができます。
青色申告のためには、事前に所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、青色申告に対応した事業主として申請する必要があります。
正確な税額を申告する
確定申告では、所得や経費の計算に誤りがないよう、正確な税額を申告することが重要です。過少申告や誤った情報提供は、後に追徴税や罰則を招く可能性があります。
収入や経費に関するすべての書類とレシートを保管し、正確な記録をもとに申告を行いましょう。必要であれば、税理士などの専門家の助言を求めることも有効です。
フリーランスの確定申告には会計ソフトの活用がおすすめ
例えば、筆者は「弥生会計オンライン」を使用しています。
会計ソフトを使うと、収入や支出のデータを簡単に管理でき、確定申告のプロセスを大幅に効率化できます。入力したデータは自動的に整理され、必要な帳簿や財務諸表を生成してくれるので、ケアレスミスをしがちな筆者にとってはとても重宝しています。
e-TAX(電子申告)にも対応しており、確定申告書の作成から提出までのプロセスをスムーズに進めることが可能です。
アナログで計算しようとすると膨大な時間がかかってしまうので、会計ソフトの力を借りてできるだけスムーズかつ確実に作業を進めることが大切です。
関連記事: フリーランスライターの確定申告完全ガイド【2025年版】
まとめ
確定申告が必要かどうかは、働き方によって判断基準が異なります。個人事業主・フリーランスは所得48万円超、給与所得者の副業は20万円超が目安です。また、副業収入が20万円以下でも住民税の申告は別途必要になる点は見落としがちなので注意が必要です。
申告不要のケースでも、赤字繰越や源泉徴収の還付を活用することで税負担を下げられる場面があります。会計ソフトや青色申告を組み合わせて、毎年の申告を負担なく続ける仕組みを整えておきましょう。

