フリーランスとして長く働き続けるためには、適切に仕事を断る勇気が不可欠です。全ての案件を受け入れてしまうと、時間の管理や専門性の維持が難しくなり、結果的にクライアントへ迷惑をかける可能性が高まるばかりか、心身の健康にも影響を与えかねません。
本記事では、クライアントとの良好な関係を保ちながら案件を断る方法、その際の具体的なメールの書き方、断るメリットについて詳しく解説します。一度引き受けてしまった仕事の断り方も解説しますので、お悩みの方はぜひ参考にしてください。
フリーランスが適切に仕事を断ることの重要性
フリーランスとしてのキャリアにおいて、仕事を断るスキルは同じくらい仕事を受けることと同じくらい重要です。全ての案件が自分の専門性に適しているとは限らず、使える時間にも制約があるためです。
過度な業務負担はクオリティの低下や過労による体調不良を引き起こす可能性があるため、自身の健康を防ぎ品質を担保するためにも、適切な断り方を知っておく必要があります。
断り方一つで、今後の仕事の流れやクライアントとの関係が左右されることもあるため、その技術を磨くことはフリーランスの必須スキルとも言えます。丁寧なコミュニケーションを取ることで、断っても良好な関係を維持し、未来の機会を閉ざさずに済むのです。
フリーランスが仕事を断る一般的な理由
フリーランスが仕事を断る代表的な理由として、キャパシティの問題や専門性から逸脱している案件の依頼、報酬が見合わないことなどが挙げられます。ここでは、4つの理由について詳しく解説します。
キャパシティの問題
フリーランスが仕事を断る際に最もよく挙げられる理由のひとつが、キャパシティの問題です。仕事の量が身体的、精神的に処理できる限界を超えた時、品質を保つためには仕事を選ぶ必要があります。
キャパシティを超える仕事を受け入れることは、ストレスの増加、作業品質の悪化、そして最終的にはクライアントの満足度の低下につながる可能性があります。
フリーランスとしての評判は非常に重要であり、長期的に見て自分のキャリアにとって最善かどうかを常に評価する必要があります。したがって、仕事を断る際には、現在のキャパシティと将来の健康および業務の質を考慮に入れることが不可欠です。
専門外の業務
専門外の業務を引き受けることは、自身の成長とスキルセットの拡大につながる場合もありますが、自分の専門性から大幅に逸脱する案件を受けることにはリスクも伴います。
専門知識が不十分な領域の仕事を引き受けると、過剰な時間を費やすことになり、結果として他のプロジェクトやクライアントに悪影響を及ぼす可能性があります。
また、期待に応えられなかった場合の信用低下も考慮しなければなりません。専門性を持って案件を選択することで、効率と効果を高め、信頼を築くことができます。
価値観の不一致
フリーランスは個人の価値観や倫理観に基づいて仕事を選ぶ自由があります。クライアントのビジネスのやり方や、提供されるサービスや製品が自分の価値観と相反する場合、その仕事を断ることは正当な選択です。
価値観が一致するクライアントと仕事をすることで、より意義深く、満足度の高い成果を出すことができます。長期的には、価値観を共有するクライアントと強固な関係を築くことができるでしょう。
予算や報酬の問題
フリーランスとして仕事を断る際のもうひとつの一般的な理由が予算や報酬です。提案された報酬が仕事の量や専門性に見合わないと感じた場合、その案件を断ることは理にかなっています。
低い報酬で仕事を引き受けると、フリーランスとしての市場価値を下げることにつながりかねません。また、適正な報酬を得ることは自己価値を維持し、モチベーションを保つ上でも重要です。報酬交渉が不調に終わった場合は、次のチャンスを待つ余裕を持つことが大切です。
特に駆け出しのフリーランスは、仕事を断ることに罪悪感を持ったり、仕事が来なくなる不安から無理をして引き受けてしまったりするケースがよくあります。筆者自身もキャパオーバー気味のときに仕事を無理に受注したり、低単価の仕事を断り切れなかったりした経験がありますが、このような事態はできる限り避けることをおすすめします。
仕事を断る前に考慮すべきこと
案件を本当に断るべきか慎重に検討する
フリーランスが仕事を断る前には、その決断が自身のキャリアと目標にとって最善かどうかを真剣に考慮する必要があります。すべての案件にはポジティブな側面とネガティブな側面があり、どちらがより重要かを検討することが肝心です。
たとえその案件が短期的には利益が低くても、長期的なつながりや将来の仕事につながる可能性を見逃してはなりません。また、多少難易度が高かったり報酬が低かったりしても、新しいスキルや経験を得る機会につながりそうな場合は、あえて受注するのも選択肢のひとつです。
しかし、プロジェクトが自分の核となる価値観や専門知識と大きく異なる場合は、断る理由が十分にあります。重要なのは、直感と事実に基づいた意思決定を行い、その決断が自身のキャリアや心身の健康に沿ったものであるかどうかを確認することです。
断ることで収入に与える影響を吟味する
案件を断ることは、直接的な収入の損失を意味するため、フリーランスとしての財務状況を考慮することが不可欠です。
収入の減少は生活に直接影響を与える可能性があるため、受けるべきかどうかは、現在の経済的な余裕と、断った後の案件の見込みに基づいて判断しましょう。
また、長期的な収入の安定性を確保するためにも、一時的な案件を断る際には、代替案の可能性や自身のマーケティング戦略を見直すことが重要です。継続的な収入を確保するための計画を立て、その案件が長期的に収入源となるかどうかを評価することが賢明です。
クライアントとの今後の関係性を十分に考える
案件を断るときには、クライアントとの将来的な関係に与える影響を十分に考慮することが重要です。仕事の断り方によっては、その後の関係に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、断る際には丁寧かつ尊敬を持って行うことが大切です。
適切なコミュニケーションと誠実な対応を取れれば、今回の案件を断ったとしても、将来的に異なる機会で声をかけてもらえる可能性が残ります。
一方で、不適切な断り方は、そのクライアントだけでなく、他の潜在的なクライアントにも悪影響を及ぼすことになりかねません。クライアントとの長期的な関係を維持するためにも、どのように断るかを慎重に検討し、可能な限り建設的な対応を心がけるよう意識しましょう。
断り方が将来の仕事に与える影響
フリーランスとして案件を断る際には、その方法が将来の仕事に与える影響を深く理解することが不可欠です。前述のように、適切な断り方は、その後のクライアントとの関係を維持し、次の仕事の機会を損なわないようにするために重要です。
断る理由を丁寧かつ具体的に説明し、感謝の気持ちを伝えることで、相手に良い印象を持ってもらえるよう努めましょう。また、できれば他の信頼できるフリーランスを推薦するなど、代替案を提供することが好印象を与える一助となります。
断りのメールは、今後もビジネスを続ける上での信頼関係を築くか、あるいは断絶するかの分かれ道となるため、慎重かつ戦略的にアプローチすることが望ましいです。
断りのメールを書く際の心構え
断りのメールを書く際は、十分に文面を検討し、謙虚な気持ちで対応する必要があります。ここでは、押さえておきたい3つの心構えについて解説します。
謙虚な気持ちで対応する
案件を断る際、自信過剰や高慢な態度は避け、謙虚な姿勢を保つことが重要です。断る理由を誠実に伝えつつ、相手の立場や期待に配慮した表現を用いることが求められます。
また、声をかけてくれたことに対する感謝の意を表し、断る理由が自己中心的ではなく、プロジェクトの成功やクライアントの利益を第一に考えた結果であることを示しましょう。
相手の理解を得るためにも、断りの理由は具体的でありつつ、余計な誤解を招かないような丁寧な言い回しを心がけることが望ましいです。
明確で誠実なコミュニケーションを心がける
フリーランスとして仕事を断る際には、理由をはっきりとさせることが大切です。あいまいな表現や過度な言い訳は、クライアントに不信感を抱かせかねません。
明確なコミュニケーションとは、断る理由を正直に伝え、その上で可能な限りの柔軟な対応を提案することを意味します。例えば、スケジュールが合わない場合は、他の期間での協力の可能性を示唆することで、前向きな対応をアピールすることができます。
また、誠実なコミュニケーションには、速やかに返答することも含まれます。長期間返答を保留せず、できるだけ速やかに状況を伝えることで、クライアントからの信頼を保つことができるでしょう。
今後も関係を維持する意志を示す
案件を断るメールを書く際には、今回の案件辞退が終わりではなく、将来の関係に向けた新たな一歩であるという意識を持つことが大切です。断りのメールにおいて、今後も相互に有益な関係を維持したいという意志を明確に示しましょう。
例えば、現在断っている案件に関連した情報や、将来的に可能性があるプロジェクトへの関心を示すことで、クライアントにポジティブな印象を与えることができます。
また、他のフリーランスの推薦や有益なアドバイスの提供など、単なる断り以上の価値を提供し、信頼関係を強めることも可能です。相手にメリットをもたらすことで、一時的な協力ができない状況であっても、長期的なパートナーシップにつながる道が開けます。
【例文】フリーランスの仕事の断り方の具体例
ここからは、フリーランスが具体的に仕事を断る方法の例文を紹介します。仕事の受注前と受注後の2パターン解説しますので、やむを得ない事態が起こったときにぜひご活用ください。
メールを利用する方法:仕事を受注する前の場合
件名: 【プロジェクト名】に関するご提案について
【担当者名】様
いつもお世話になっております。〇〇です。
このたびは、【プロジェクト名】に関するお話をいただき、誠にありがとうございます。
大変魅力的なご提案をいただき、心から感謝しておりますが、
残念ながら現在の私のスケジュールでは、新たなプロジェクトに
万全の状態で参加することが難しい状況にあります。
つきましては、恐れ入りますが今回のプロジェクトへの参加は
辞退したく思っております。
大変興味深い案件で、スケジュールが許せばぜひ参加させていただきたかったのですが、
現状を鑑みるとご迷惑をおかけしてしまう可能性が高く、どうぞご理解ください。
可能であれば、今後のプロジェクトでご一緒できる機会を楽しみにしております。
また、この案件に適した他のフリーランスをご紹介することも可能ですので、
ご希望があればお知らせください。
この度は貴重な機会をいただき、深く感謝申し上げます。
△△様のプロジェクトが成功されることを心から願っております。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
【あなたの名前】
【あなたの連絡先】
メールを利用する方法:仕事を受注した後の場合
件名:【プロジェクト名】の進行に関するご相談
【担当者名】様
平素より大変お世話になっております。〇〇です。
本日は【プロジェクト名】の今後の進行についてご相談があり、連絡を差し上げました。
実は、〇〇のため、大変遺憾ながら、プロジェクトを継続することができなくなりました。
(具体的な理由:例えば「個人的な緊急事態」や「予期せぬ健康上の問題」など)
そのため、心苦しいお願いではございますが、
本件について後任に引き継ぎの上辞退したく、今後のご相談ができればと思っております。
プロジェクトの重要性を十分理解しており、
このような判断を下さざるを得ない事態に至ったことを深くお詫び申し上げます。
現在までの作業に関しては、【作業内容や成果物の引き渡し方法】を行う予定です。
また、私の後任として、信頼できるフリーランスをご紹介することも可能です。
このような突然の事態をお伝えすることになり、誠に申し訳ございません。
△△様には多大なご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。
万が一、この件に関してご相談やご質問がございましたら、いつでもご連絡ください。
可能な限り対応させていただきます。
改めてこのような事態となりましたことを深くお詫び申し上げるとともに、
今後とも変わらぬお付き合いのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
【あなたの名前】
【あなたの連絡先情報】
仕事の調整に苦労しているならフリーランスエージェントの利用がおすすめ
案件を断る決断は、しばしば複雑な感情や将来の仕事への影響を考慮しなければならないため、簡単なことではありません。
このような状況で非常に有効なのが、フリーランスエージェントの利用です。エージェントはフリーランサーのスキルや経験、キャリアの目標に合った案件を紹介し、交渉や条件の調整を代行してくれます。
フリーランスエージェントを利用することで、時間管理や仕事の質の向上、そして精神的な負担の軽減が期待できます。専門家に仕事の調整を委ねることで、あなたは本来の業務に専念し、スキルアップにも励むことが可能です。仕事の調整に苦労しているフリーランスの方は、エージェントの利用をおすすめします。
下記の記事でフリーランスエージェントの仕組みやおすすめの業者を紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
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まとめ
時には「いいえ」と言う勇気が、長期にわたる成功への道を開く鍵となります。断ることは短期的には難しい決断かもしれませんが、お互いの信頼と尊重を築く上で、長期的にはプラスの効果をもたらします。
プロのフリーランスとして良い印象を持ってもらうためには、断り方に十分な配慮をする必要があります。相手を尊重し、明確かつ礼儀正しいコミュニケーションを心がけることで、結果として両者の関係をより強固なものにしてくれます。