歯科衛生士としてのキャリアにおいて、フリーランスという選択肢は魅力的に感じるかもしれません。しかし、現在の市場環境下で歯科衛生士がフリーランスとしての働くことは本当に合理的な選択なのでしょうか。
本記事では、歯科衛生士がフリーランスとして働くメリットとデメリット、そして転職を考慮する際の現状について徹底解説します。フリーランスと転職、それぞれの選択肢が歯科衛生士のキャリアにどのように影響するのか、実情を基に解明していきます。
歯科衛生士の職種におけるフリーランスという選択肢
結論から言えば、歯科衛生士の職種はクリニックや病院といった施設で働くことが一般的であるという背景からも、フリーランスという選択肢はかなり限定的です。
フリーランスの歯科衛生士は、教育、コンサルティング、執筆活動など、他の専門的な分野で活動することがあります。そのため、従来のクリニックの設定を離れて個人の専門知識を利用したいと考える歯科衛生士にとっては、フリーランスの働き方が魅力的に映る可能性があります。
フリーランスの歯科衛生士になるメリット
フリーランスの歯科衛生士になるメリットとして、働く時間と場所の柔軟性や多様な経験の獲得、専門性を活かした働き方などが挙げられます。
ここでは、3つのメリットについて詳しく解説します。
働く時間と場所の選択が自由
フリーランスの歯科衛生士として働く最大のメリットは、働く時間と場所の自由度が高まることです。通常の歯科クリニックや病院においては、勤務時間や勤務地が固定されていることが一般的ですが、フリーランスの場合は自分でスケジュールをコントロールすることができます。
プライベートとのバランスを取りやすくなるだけでなく、働きたい時と時間に仕事を選ぶことが可能となります。
さまざまな経験とスキルを獲得しやすい
フリーランスとして働くことで、教育や講演、執筆活動など、さまざまな経験が得られる可能性があります。これにより、多様な環境や状況に対応する能力が身につき、経験値が高まります。
また、フリーランスとしては個人のスキルや知識を売りにするため、常に最新の知識や技術を学ぶ動機づけにもなります。これらの経験は、将来的に自分の専門性を深めたり、より高いレベルの職に進むための資質を形成する助けとなるでしょう。
専門性を活かした働き方ができる
フリーランスの歯科衛生士は、自分の専門性を最大限に活かして働くことができます。現場はもちろん、これまでの経験を活かして教育や執筆活動、コンサルティングなどの分野で活躍することも可能です。
フリーランスとしての働き方を続けていくと、個人としてのブランド力も高まります。さらに、自分の興味や専門性に合わせたプロジェクトに参加することで、仕事の満足度も向上します。
フリーランスの歯科衛生士になるデメリット
フリーランスの歯科衛生士にはメリットもありますが、残念ながらデメリットが勝ってしまう側面もあります。ここでは、3つのデメリットを見ていきましょう。
現場よりも教育や執筆活動などがメインになる可能性が高い
歯科衛生士は通常、クリニックや病院で患者のオーラルケアを提供する役割を担っていますが、フリーランスとして活動する場合、現場での実務が限定される可能性があります。
そのため、フリーランスの歯科衛生士は、教育や執筆活動、コンサルティングなどの他の活動に焦点を合わせざるを得なくなる場面もあるでしょう。
個人の専門知識や経験を活かすチャンスを提供する一方で、直接患者のケアに携わる機会が減少しやすくなります。
安定した収入の確保が難しい
フリーランスの歯科衛生士は、安定した収入を確保するのが難しい場合があります。業種・業態にかかわらずフリーランスとして働く上で起こる一般的な問題ではありますが、特に歯科衛生士の場合、仕事の機会が限定される可能性があるため、さらに困難を極める可能性があります。
安定した収入を確保するためには、複数の収入源を持つことが重要であり、これには教育、執筆、コンサルティングなどの他の活動が含まれる可能性があります。
仕事の獲得が困難
前述のように、フリーランスの歯科衛生士は新しい仕事やプロジェクトを獲得するのが困難になりがちです。
仕事の機会を見つけるためには、専門のフリーランスプラットフォームやネットワーキング、そして個人の専門知識や経験をアピールすることが重要ですが、残念ながら歯科衛生士に特化したフリーランス向けのプラットフォームは存在しないのが現状です。
このことから、仕事を獲得するためには自ら売り込みが必要になる可能性が高いという点もネックとなります。
フリーランス歯科衛生士の現状
厚生労働省が公開している「令和2年衛生行政報告例〔就業医療関係者〕の概況」によれば、令和2年(2020年)時点の歯科衛生士の勤務形態の割合は下記の通りです。
(データをもとに独自に加工しています)
・常勤(正規雇用): 52.3%
・常勤(期限付き職員等): 3.9%
・非常勤(パートタイム): 39.0%
・その他: 3.6%
フリーランスの歯科衛生士は「その他」のカテゴリーに含まれると考えられるため、フリーランスで活動する歯科衛生士は全体の3.6%以下であると推測されます。
上記の結果から見ても、フリーランスの歯科衛生士の割合は全体としては少ないという事実が伺えます。
歯科衛生士として転職を選ぶメリット
一方、転職を選んだ場合はどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、歯科衛生士として転職を選ぶメリットを紹介します。
安定した収入と雇用機会の確保が叶う
転職を選ぶことで、安定した収入と雇用機会を確保できます。フリーランスとは異なり、正社員や契約社員として働くことで定期的な収入が得られるため、生活の安定に寄与します。
また、働くクリニックや病院が社会保険を完備している場合、健康保険や厚生年金などの福利厚生を手厚く受けられる点もメリットです。さらに、一定の雇用期間が保証されることで、将来的な生活設計を立てやすくなります。
専門スキルを継続的に活用できる
歯科衛生士として転職を選ぶことで、自身の専門的な知識や技術を継続的に活用できます。
前述のように、フリーランスの場合は仕事の内容が多岐にわたる可能性があるため、専門性を磨く機会が減少する可能性があります。
しかし、歯科クリニックや病院で働くことで、専門的な技術を日々の業務で活用し、さらにスキルアップすることが可能になります。また、同じ職場で長期間働くことで、専門知識を深めたり、新しい技術を学ぶ機会も増えます。
継続的なキャリアアップが可能
歯科衛生士としての職を得ることで、継続的なキャリアアップが可能になります。
フリーランスは仕事の安定性が低いため、キャリアの将来設計が困難になる可能性があります。しかし、正社員や契約社員として働くことで、定期的な評価や昇進の機会が得られるため、キャリアのステップアップを目指すことができます。
また、長期的に同じ職場で働くことで、信頼関係を築きやすくなり、より多くの責任を持った仕事を任される機会も増えます。さらに、専門性を高めるための研修や教育プログラムへの参加を推奨される職場も多く、職務の幅を広げることも期待できます。
歯科衛生士として転職を選ぶデメリット
歯科衛生士として転職を選ぶデメリットには、給与の上昇幅に限界がある点や職場環境がある程度限定的になる点などが挙げられます。
給与の上昇幅に限界がある
歯科衛生士として転職を選ぶ際には、給与の上昇幅に一定の限界が存在することをあらかじめ受け入れる必要があります。
一般的に歯科衛生士の職種では、年功序列に基づく給与アップが一般的であり、給与の上昇幅は他の職種に比べて限定的であることが多いです。さらに、高い専門性を持っていても職場の状況次第で管理職への昇進機会が少ない場合もあり、それが給与の上昇の制限につながることがあります。
職場環境がある程度限定される
歯科衛生士として転職を選ぶ場合、職場は歯科クリニックや病院が主となるため、ある程度限定された環境で働くことを余儀なくされます。
ただし、「どこへ行っても同じ流れで仕事ができる」という観点から見ると、メリットに感じる方もいるでしょう。資格職であるために、地域を移動しても比較的容易に職を見つけることが可能であり、その点も強みといえます。
例えば、引っ越しや家庭の事情などで働く場所を変える必要がある場合でも、歯科衛生士の資格を持っていれば、新しい職場で働くチャンスは広がります。
しかし、職場の種類が限定されるため、働く環境や職場の雰囲気に対する選択肢が少なくなり、好みの職場を見つけることが困難になる可能性もあります。
また、特定の地域においては歯科クリニックや病院の数が限られているため、選択肢がさらに制限されることも考慮する必要があります。
結局、フリーランスと転職のどちらが良いのか?
現段階では、フリーランスとして仕事を見つけることは困難であり、フリーランスの歯科衛生士はまだ少ないのが実情です。
最近ではフリーランスが一般的になってきており、将来的にはフリーランス歯科衛生士の需要が増える可能性もあります。しかし、現時点での安定した収入と職の安定を考えると、転職を選ぶ方が良い選択であるといえます。
フリーランスは柔軟な働き方を提供しますが、仕事の確保は難しい面があります。一方、転職は安定した収入と働く場所を提供し、現段階では歯科衛生士にとってはより現実的な選択といえるでしょう。
歯科衛生士の転職におすすめのサイト
最後に、歯科衛生士が転職する際におすすめのサイトを紹介します。どちらも歯科業界を専門に取り扱っているため、業界を専門的に理解している転職エージェントがきめ細かにサポートしてくれます。
歯科転職ナビ
歯科転職ナビは歯科業界の専門家、特に歯科衛生士や歯科助手、歯科医師を対象とした転職サポートサイトです。
歯科医院、訪問歯科サービス、さらには一般企業への転職をサポートしており、歯科衛生士の転職支援に特に力を入れていて、2023年10月現在、7,000件以上の案件があります。
求職者は担当者を通じて職場の環境や人間関係を事前に把握でき、面接の際にはアドバイスを受けることができます。
ファーストナビ歯科衛生士
ファーストナビ歯科衛生士は歯科専門の転職エージェントサービスで、プロのエージェントが医院に直接インタビューを行い、採用条件を確認しています。年間数千人の歯科衛生士や歯科医師の転職をサポートしており、非公開求人も多数取り扱っています。
キャリア相談から求人紹介、面接日程の調整、条件交渉、入職準備まで、全てのプロセスにおいて転職エージェントが利用者に手厚いサポートを提供しています。
全国各地の求人を見つけられるので、地方にお住いの方にとっても強い味方です。
FAQ(よくある質問)
フリーランスの歯科衛生士について、よくある疑問をまとめました。
フリーランス歯科衛生士の成功例はあるのか?
フリーランスの歯科衛生士は少ないものの、成功例は存在します。成功のポイントは営業能力と自分の専門知識を適切にマーケットに適用できる点であり、自分で営業活動を行い、多様なプロジェクトに取り組む能力がある人は成功できる可能性があります。
歯科衛生士のフリーランスが増える可能性はあるのか?
フリーランスの働き方が一般的になってきているものの、歯科衛生士のフリーランスはまだ一般的ではありません。教育や執筆活動などの分野でフリーランスとして活動する歯科衛生士は増える可能性がありますが、現場での仕事は当面、雇用が一般的のままになる可能性が高いと考えられます。
歯科衛生士としてフリーランスになる際のリスクは?
仕事を見つけるのが困難で、安定した収入が得られにくいことが主なリスクです。また、フリーランスの先例が少なく、ロールモデルを見つけにくい点もリスクとなります。
まとめ
歯科衛生士としてフリーランスの道を選ぶことは可能ですが、働き方が限定されるため、仕事を見つけるのに苦労する可能性が高いです。限られた仕事の機会と比較して、転職を考慮することでより多くの選択肢と安定した働き方を得ることができます。
現段階では、転職エージェントサービスを利用して新しい職場を探し、自身のキャリアをより安定させ、プロフェッショナルなサポートを受けながら転職活動を進めることが、良い選択となる可能性が高いです。
現時点における自身の状況を踏まえて、将来のキャリアパスを慎重に計画することが重要です。
関連記事