「RPA」という言葉をご存知でしょうか? この頃さまざまな場面で盛んに登場する言葉ですから、おそらく一度はどこかで目にしたことがあるでしょう。企業のシステム担当の方でしたら、RPAツールの導入を検討したことがある方もいるかもしれません。
近年、RPAツールはめざましい進歩を遂げていて、さまざまな分野に活用範囲が広がっています。中でも特に注目されているのが、自然言語処理(AI=人工知能の一分野)との連携です。
とはいえ、「RPAってなに?」、「どんなことをしてくれるの?」と聞かれると、曖昧な答えになってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、RPAとはどんなものか、AIとの連携などについて紹介します。
そもそもRPAってどんなもの?
RPAとは、「Robotic Process Automation = ロボティックプロセスオートメーション」と呼ばれる概念です。もっと具体的に言うと、「ルールエンジン(規則的な動作をプログラム化して実行する仕組み)を搭載しているソフトウェアロボットが、業務を代行してくれる」という考え方のことを言います。
少し乱暴になってしまいますが、RPAツールを分かりやすく一言で言うなら、「今まで人の手でやっていた繰り返しの単純作業を、ロボットが代わりにやっておいてくれるソフト」と説明すると、イメージしやすいかもしれません。
近年、「働き方改革」というキーワードが世界中で飛び交っています。この「RPA」という概念を使って開発されているRPAツールは、使い方次第で業務効率を大きく改善する助けになってくれるのです。
RPAは具体的にどういうことをしてくれるの?
たとえば、「朝、担当者が出社してパソコンを起動したら、メールソフトを開いて、『A社発注一覧.xlsx』という取引先からのExcelの受注データをダウンロードする。それから、その内容を自社の受注管理用のExcelの一番下の行に変更を加えずに転記する」という作業を毎日必ず行っているとします。
これを作業ごとに並べると、下記の4ステップになります。
- 朝、担当者が出社してパソコンを起動する
- メールソフトを開く
- 「A社発注一覧.xlsx」という取引先からのExcelの受注データをダウンロードする
- その内容を自社の受注管理用のExcelの一番下の行に変更を加えずに転記する
この一連の作業をあらかじめ記憶させることで、担当者が自分で行わなくても、RPAツールが自動的に作業を進めてくれるのです。
前述の作業を人力で担当者が1人で行う場合、1日30分かかっているとすると、30分×週5回=150分、つまり1週間で2.5時間もの時間をこの作業に割り当てていることになります。
RPAツールを使って浮いた時間を他の業務に割り振ることもできるので、仕事の効率を格段にアップすることができます。
もしこの作業のためだけに出社する日があるとしたら、RPAツールに任せて担当者が休みを取る、ということも可能になるでしょう。
また、この作業を人力で行う場合、担当者が複数人にわたることもあります。そうすると、担当者によって作業のやり方にばらつきが出てしまう、工程が抜けてしまうなどのケアレスミスが発生してしまうことも起こり得ます。
RPAツールを使うことで、こういった作業のばらつきやミスを避けられるというメリットもあるのです。
RPAツールの困った欠点
RPAとはどんなものかが分かったところで、自然言語処理とRPAツールの連携に話を戻します。
RPAツールは「定型的な業務を、人間の代わりに繰り返してくれるソフト」でした。確かにこのツールはとても便利なのですが、欠点もあります。
一言で言うと、「単純作業には便利だけど、かゆい所には手が届きにくい」ということです。
先程の例で言うと、
- 朝、担当者が出社してパソコンを起動する
- メールソフトを開く
- 「A社発注一覧.xlsx」という取引先からのExcelの受注データをダウンロードする
- その内容を自社の受注管理用のExcelの一番下の行に変更を加えずに転記する
という4ステップの作業を、RPAツールが代わりにやってくれる、ということでした。
ですが、もしも下記のような事態が起こってしまうとどうなるでしょうか。
”いつもは「A社発注一覧.xlsx」という名前だったExcelの添付ファイルが、「hattyu.xlsx」という名前で送られてきた”
RPAツールは、単体だと「ルールに沿った単純作業を繰り返す」ことしかできません。つまり、ルールに沿っていない「hattyu.xlsx」という添付ファイルを探し出すことはできないので、RPAツールはすっかり役に立たなくなってしまいます。
- 朝、担当者が出社してパソコンを起動する
- メールソフトを開く
- 「A社発注一覧.xlsx」という取引先からのExcelの受注データをダウンロードする
- その内容を自社の受注管理用のExcelの一番下の行に変更を加えずに転記する
あくまでも、この作業にぴったり合わない限り、RPAツールは作業を代行してくれないのです。上手く行かなかった場合、完了できなかった作業は担当者が人力で行わなければなりません。
これでは余計に手間がかかってしまいます。取引先の担当者が毎回違う名前でExcelファイルを送ってきたら、すっかりお手上げです。
たとえ名前が同じだったとしても、そのExcelファイルの内容が毎回違う形式であれば、同様にエラーになってしまいます。
こういった予測のつかないトラブルがよく起こるので、「RPAツール、導入したけど全然使えなかった! 騙された!」という体験談が発生しがちになってしまうのです。
それでは、そういう困った例外に対応するのは難しいのでしょうか?
ここでようやく登場するのが、自然言語処理になります。
自然言語処理(=AIの一分野)と連携することで、この困った現象を解決できる可能性があるのです。
自然言語処理とRPAの連携って何がすごいの?
自然言語処理をRPAツールに連携させることで、「文章の意味を分析してプログラムを実行する」という動作が可能になります。
私たち人間が文章を読む場合は、普通その文章がどんな「意味」なのかを考えながら読んでいます。たとえば先述の例なら、同じ送信元であれば「発注一覧.xlsx」と「hattyu.xlsx」は同じ内容のファイルだな、ということを考えて理解できます。
つまり、先ほどの例で言うと
- RPAが決まった時間にパソコンのメールソフトを起動する
- 「A社から届いているメールの発注一覧のExcelファイルはどれか?」をRPAツールが自分で考える
- 2で探し出したA社からのExcelの受注データをダウンロードする
- その内容を自社の受注管理用のExcelの一番下の行に変更を加えずに転記する
という流れをRPAツール自ら考えて行えるようになります。「発注一覧.xlsx」というファイルは見つからないのでこれ以上作業できません、というエラーを減らすことが期待できるでしょう。
RPAツールと自然言語処理連携の可能性
今回の記事で取り上げた例はほんの一部ですが、たとえば他にも「1週間に1回、SNSに投稿されている膨大な自社商品の感想の中から肯定的な意見をRPAツールが自動で抽出する」などの使い方が考えられます。
「1ヶ月に1回、メールで受信した複数のクレームをRPAツールが自動で要約して、自社サービスの何が問題になっているのかざっくりと把握する」といった使い方も有効でしょう。
自然言語処理連携を活用することによって、RPAツールが「単純作業の代行ツール」から、「考えることが必要な作業を代行するツール」に進化するのです。
これによって企業の業務改善をより効率的に進められますし、自社製品の分析を高い精度で行うことが可能になれば、企業価値の向上にも繋がるでしょう。
自然言語処理を連携させることで、今までRPAツール単体ではできなかった作業が可能になり、活用の幅がますます広がる未来が予想されるのです。